現役医師であり統合医療の第一人者である崎谷医師が、うつ病の症状・原因・治療に悩む方に対して情報を発信しています。
抗うつ薬SSRIと自殺
抗うつ薬SSRIの服用によって、人に対する共感、関心が低下します。これを「感情の平板化」といいます。
抗うつ薬SSRIによる自殺で非常に多いのが「首吊り」や「飛び降り」自殺です。 この首吊り自殺は家族の寝室の隣部屋で行うといった遺族に配慮のない形で行われます。 飛び降り自殺にしても簡単に遺族に発見されるような場所で行います。
傷心自殺には、このような自殺行動は見られません。これは抗うつ薬SSRIによる感情の鈍麻が原因と考えられています。
また抗うつ薬SSRIによるアカシジアが自殺を招くことも報告されています。
実際に臨床試験で公表されたデータは、抗うつ薬SSRIと自殺の関連を実証しています(疫学的調査ではS.Donovanらの論文が有名)。
- 抗うつ薬パキシル服用者の自殺率は3倍高い(D.Baldwin, “The Treatment of Recurrent Brief Depression” <paper presented at the European College of Neuropsychopharmacology Meeting, London, Sep. 24, 1999>)(米食品医薬品局(FDA)は、2006年に抗うつ薬パキシル服用者に自殺を試みる行動が増える傾向があると警告。販売元は厚労省の指導を受け、2006年6月、国内向けの薬の使用上の注意に「投与中に自殺行動のリスクが高くなる可能性が報告されており、患者を注意深く観察すること」との文言を加えています。)
抗うつ剤パロキセチン(パキシル)投与によるうつ病患者さんの自殺率(メタ研究)
21歳以下の児童〜思春期に抗うつ剤の代表的SSRIとよばれるパロキセチン(パキシル)を投与すると自殺率が高くなる、セロトニン症候群が起きやすいことがすでに報告されています(Psychopharmacol Bull. 2006;39(1):31-7、Am J Psychiatry 2007;164:1356-1363.)。
今回は、パロキセチン(パキシル)の製造販売特許を持つグラクソスミスクライン社が行った研究のデータから、うつ病患者さんのパロキセチン(パキシル)の服用による自殺の影響を調べた2011年の論文です(J Clin Psychiatry. 2011 Nov;72(11):1503-14. Epub 2011 Feb 22.)。
その結果、自殺率はプラセボ投与群と差がなかったものの、自殺企図の割合はパロキセチン(パキシル)投与群が高い結果でした。その理由として、児童〜思春期に対するパロキセチン(パキシル)投与による自殺企図の増加が影響しているというものです。
利益相反の製薬会社の研究でさえも、抗うつ剤の代表的SSRIであるパロキセチン(パキシル)の投与で児童〜思春期に対して自殺の割合が増えることは認めざるを得ない結果となっています。
- 抗うつ薬ゾロフト服用者の自殺率は2倍高い(デヴィット・ヒーリー「SSRI論争と訴訟」)
- 抗うつ薬プロザック服用者の自殺率は3〜5倍高い(M. Fava and J.F.Rosenbaum, “”Suicidality and Fluoxetine: Is There a Relationship?” Journal of Clinical Psychiatry 52 (1991))etc.
抗うつ薬SSRIと自殺