現役医師であり統合医療の第一人者である崎谷医師が、うつ病の症状・原因・治療に悩む方に対して情報を発信しています。
うつ病の医学ニュース(23)
うつ病のある高齢者は認知症とアルツハイマー病(AD)の発症率が有意に高い
高齢者のうつ病が認知症とアルツハイマー病(AD)の発症リスク上昇と関係することを示すデータが報告されました(Saczynski JS, et al. Neurology 2010; 75: 35-41.)
Framingham Heart Studyのオリジナルコホートで1990〜94年にうつ病の有無を評価した949例(女性が63.3%、平均年齢79歳)を対象に、うつ病と認知症およびアルツハイマー病発症との関係を検討しました。Center for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D)で16ポイント以上と定義したうつ病の有病率は13.2%でした。
17年間の追跡で164例が認知症を発症した(うち136例がアルツハイマー病(AD))。認知症の発症率はうつ病があった群が21.6%、なかった群が16.6%で した。年齢、性、学歴、ホモシステイン値、APOEε4を補正した結果、うつ病があった群は認知症〔ハザード比(HR)1.72、P=0.035〕と AD(HR 1.76、P=0.039)のリスクが50%以上高い結果でした。結果は、うつ病で抗うつ薬を服用している参加者を含めた場合も同じでした。
CES-Dが10ポイント上昇するごとに、認知症(HR 1.46、P<0.001)とアルツハイマー病(HR 1.39、P=0.005)のリスクが有意に高くなりました。これは、軽度認知機能障害の可能性がある参加者を除外した場合も結果は同様でした。
脳の機能低下という点ではうつ病もアルツハイマー病も同じですが、前者は機能的障害であり、後者は脳萎縮を伴う器質的障害である点が異なります。うつ状態は身体機能も低下しますので、認知症になりやすいという結果は当然ですね。
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