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現役医師であり統合医療の第一人者である崎谷医師が、うつ病の症状・原因・治療に悩む方に対して情報を発信しています。

うつ病の医学ニュース(37)

女性のうつ病患者,抗うつ薬服用者で脳卒中リスク高まる

従来,うつ病に伴う神経系,免疫系,内分泌系への影響と脳卒中発症との関連性が懸念されてきました。うつ病と脳卒中発症との関連性,さらに近年,指摘されている抗うつ薬による脳卒中の発症リスクとの関連性について,Nurse's Health Studyに参加の脳卒中既往がない女性8万574例(平均年齢66歳)を2000年から6年間前向きに観察した結果が報告されました(8月11日Strokeオンライン版)。

その結果、抗うつ薬服用例の中で脳卒中発症リスクが有意に高かったのは選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)服用例でした。

うつ病は慢性炎症疾患の一部です。炎症反応によってリンパ球から脳へサイトカインが放出され、最終的に血液中のストレスホルモンが上昇します。このストレスホルモン(グルココルチコイド)の濃度が長期間高いままだと、高血圧、動脈硬化が起こります。SSRIがこのようなリスクを高めるのはなぜなのかは、今後の研究が待たれるところです。

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→うつ病と脳卒中発症との関連性,さらに近年,指摘されている抗うつ薬による脳卒中の発症リスクとの関連性について,Nurse's Health Studyに参加の脳卒中既往がない女性8万574例(平均年齢66歳)を2000年から6年間前向きに観察した。

うつ病例の基準は,5-item Mental Health Index(MHI-5)スコア52以上(2000年のみ算出),医師によるうつ病診断,抗うつ薬服用の有無と薬剤の種類についての自己申告(いずれも同年から隔年で,既往歴および現病歴を調査)に基づいた。

その結果,6年間に脳卒中を発症したのは,8万574例中1,033例(虚血性538例,出血性124例,不明371例)でうつ病とされた306例を年齢,高血圧,脂質異常症,糖尿病などの因子で補正すると,うつ病と脳卒中発症リスクとの有意な関連が認められた〔ハザード比(HR)1.29,95%CI 1.13〜1.48〕。

MHI-5スコアが52未満,うつ病と診断された抗うつ薬服用例(129例)では脳卒中リスクはさらに上昇(同1.39,1.15〜1.69)。一方,非服用例(103例)では有意な関連性は見られなかった(同1.18,0.96〜1.45)。

また,追跡期間中にうつ病と診断された160例については脳卒中発症リスクの上昇が認められたが(同1.41,1.18〜1.67),既往例(77例)では有意な関連性が見られなかった(同1.23,0.97〜1.56)。

なお,抗うつ薬服用例の中で脳卒中発症リスクが有意に高かったのは選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)服用例であり(同1.39,1.13〜1.72),他剤服用例ではリスクとの関連性はなかった(同1.14,0.82〜1.58)。

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