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現役医師であり統合医療の第一人者である崎谷医師が、うつ病の症状・原因・治療に悩む方に対して情報を発信しています。

うつ病の医学ニュース(38)

1日に2杯以上のコーヒーで女性のうつ減少

米ハーバード公衆衛生大学院の研究で,Nurses' Health Studyのデータを基に米国人女性5万人を10年間前向きに追跡。1日2カップ以上のコーヒー摂取で,うつの有意な減少が見られたとことが報告されました(Arch Intern Med 2011; 171: 1571-1578

今回の研究では、Nurses' Health Studyのうち,1996年に抑うつ症状がなかった5万739人(平均年齢63歳)を2006年まで追跡しました。2年ごとに行われた郵送調査のうち,1980〜2004年の回答からコーヒーの平均累積摂取量を求め,うつについては2000〜06年に臨床的診断,抗うつ薬の定期的な使用について尋ねました。コーヒーへの曝露から2年以上経た期間におけるうつの発症との関連を調べました。

10年間の追跡期間中,2,607例のうつが発生しました。コーヒーの摂取を週1杯以下,週2〜6杯,1日1杯,1日2〜3杯,1日4杯以上に分けると,コーヒーの摂取頻度が高いグループほど,喫煙率が高く,アルコール摂取が多く,教会や地域グループへの参加が少なく,肥満や高血圧,糖尿病が少ない結果でした。

年齢,エネルギー摂取量,閉経状況,喫煙状況,BMI,身体活動,教会や地域グループへの参加の有無,婚姻状況,基礎疾患,1996年のメンタルヘルスインデックススコアなどの交絡因子を調整後,1週間に1杯以下と比較した場合のうつ発生の多変量相対リスクは,1日2〜3杯で0.85(95%CI0.75〜0.95),1日4杯以上で0.80(同0.64〜0.99)と低下した(傾向性のP値<0.001)。週に2〜6杯,1日1杯では有意差はありませんでした。

1日のカフェイン消費量を5つのグループ(100mg未満,100〜249mg,250〜399mg,400〜549mg,550mg以上)に分けて検討したところ,最大(550mg/日以上)を最小(100mg/日未満)と比べた多変量相対リスクは0.80(同0.68〜0.95)でした(傾向性のP値=0.02)。

なお,カフェインフリーコーヒーとうつの間には関連はなかったようです。

うつの発症率が少ないコーヒーの摂取頻度が高いグループほど,喫煙率が高く,アルコール摂取が多く,教会や地域グループへの参加が少ないという結果は、不思議ですね。これはうつを引き起こす現代社会のライフスタイルそのものだからです。ただ、カフェイン自体はコカイン同様に興奮作用をもつアルカロイドですから、抑うつ症状が改善されても不思議ではありません。

しかし、男性では,コーヒー摂取とうつの発症とはこれとは逆の関係にあることが報告されています。これはおそらくカフェインの作用というより、コヒー摂取量が多くなることと他のうつを引き起こす因子が相関しているのではないかと考えます。男性と女性で反対の結果がでるのも不思議ですね。まだ検討の余地がありますが、うつの治療にコーヒーを用いるのは、不眠を引き起こすために要注意です。

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