現役医師であり統合医療の第一人者である崎谷医師が、うつ病の症状・原因・治療に悩む方に対して情報を発信しています。
うつ病の医学ニュース(39)
うつ病が脳卒中リスクの上昇と関連
計約32万人を対象とした28件の研究データを用いてシステマチックレビューとメタアナリシスを行った結果,うつ病は脳卒中発症率および脳卒中による死亡率の上昇と有意に関連していることが論文報告されました(JAMA(2011; 306: 1241-1249)。
今回、2011年5月までにMEDLINE,EMBASE,PsycINFOに掲載された前向き研究の中から,脳卒中の発症率と死亡率,うつ症状(自己申告スケールあるいは医師の診断による)を報告した論文を検索。今回の解析基準に合致する前向きコホート研究28件を同定しました。
これらの研究の参加者計31万7,540例中8,478例が2〜29年間の追跡期間中に脳卒中を発症しました。プール解析でベースライン時にうつ病を発症していた場合と発症していなかった場合を比べた結果,うつ病は全脳卒中リスクの45%上昇,致死性脳卒中リスクの55%上昇,虚血性脳卒中リスクの25%上昇と関連していました。一方,うつ病と出血性脳卒中との間には関連は認められませんでした。
さらに,米国の最新の脳卒中統計を基にうつ病と脳卒中との関連を絶対リスクとして推算した結果,うつ病患者10万人当たりの脳卒中発症数(年間)は,全脳卒中で106例,虚血性脳卒中で53例,致死性脳卒中で22例でした。
今回の考察では、うつ病は,既知の神経内分泌作用や免疫学的あるいは炎症作用,不健康な生活習慣(喫煙,運動不足,不健康な食事,服薬コンプライアンスの不良),肥満などのほか,脳卒中の危険因子として知られる糖尿病や高血圧といった合併症など,さまざまな機序を介して脳卒中の発症に影響している可能性およびうつ病患者が服用する抗うつ薬が,今回観察された関連性に関与している可能性も指摘しています。
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