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現役医師であり統合医療の第一人者である崎谷医師が、うつ病の症状・原因・治療に悩む方に対して情報を発信しています。

うつ病の医学ニュース(45)

うつ病治療:支出は激増したが質の改善わずか

米国では1980年代から90年代にかけてうつ病の診断・治療を受ける成人が増加し,成人うつ病患者で抗うつ薬を処方される割合は増加しましたが,心理療法を受けたり入院したりする割合は減少しています。

今回、メディケイドに加入しているうつ病患者に対する支出は10年間で大幅に増加したが,医療の質はわずかしか改善されていないという研究結果が論文発表されました(Archives of General Psychiatry(2011; 68: 1218-1226)。

メディケイドに加入しているうつ病患者に対する支出の大幅な増加の大部分は抗精神病薬に対する支出の増加です。これはいかにうつ病に対する薬物療法が非効率であるかを物語っています。さらに副作用も考えると、本当にこのような馬鹿げたことは止めてもらいたいものです。

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→1996年7月〜2006年6月のフロリダ州におけるメディケイド請求データを用い,うつ病医療サービスの利用状況,支出,医療の質の変化を評価した。対象は18〜64歳のメディケイド加入者で,うつ病の主診断により1回以上入院した患者,またはうつ病の外来診療の請求が2回以上あった患者とした。

年度ごとのうつ病患者数は8,970例から1万3,265例まで幅があり,研究期間終了に近づくほど増加した。同期間中のうつ病患者の総数は5万6,805例だった。同期間中,これらの患者に支出された精神医療関連の平均費用は,1人当たり2,802ドルから3,610ドルと29%増加した。これは薬物療法関連の支出が110%と大幅に増加したためで,そのうちの大部分は抗精神病薬に対する支出の増加(949%増)によるものだった。

 

一方,研究期間中に心理療法を受けた患者の割合は56.6%から37.5%に減少,入院した患者の割合も9.1%から5.1%に減少した。これに対して精神科の薬剤を処方された患者の割合は,いずれの薬剤クラスでも一定または増加した。抗うつ薬の使用は80.6%から86.8%に,抗精神病薬の使用は25.9%から41.9%に増加し,抗不安薬の使用は62.7%から64.4%とほぼ一定で推移した。しかし,服薬や心理療法へのアドヒアランス,適切なフォローアップ受診の有無などを含めた医療の質の変化を評価したところ,服薬アドヒアランスに関してはわずかに改善していたが,心理療法へのアドヒアランスについては一定の変化が見られず,適切なフォローアップ受診は減少した。

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