現役医師であり統合医療の第一人者である崎谷医師が、うつ病の症状・原因・治療に悩む方に対して情報を発信しています。
うつ病の医学ニュース(46)
うつ病とくに抗うつ薬服用者で脳卒中リスク高まる
1976年に始まった米国の女性看護師保健研究(NHS)の2006年までの追跡率は94%を超えています。この研究の2000年から06年の6年間の追跡で,うつ病と脳卒中発症リスク上昇との相関が確認されたことが論文報告されました(Stroke(2011; 42: 2770-2775)。
NHSには,米国の11州に住む女性正看護師12万1,700人が登録され,医療や健康管理に関する郵送質問票に回答している。ライフスタイルや慢性疾患発症に関するデータは,半年ごとに更新されます。
以前に同コホートで,うつ病と突然死や致死的冠動脈疾患のリスク上昇とが相関することを確認されています(Journal of the American College of Cardiology(2009; 53: 950-958)。
今回の結果から、特に抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)服用者で全脳卒中リスクが39%上昇したのは注意を要します。
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→今回の解析では,2000年の調査時にうつ症状,診断,抗うつ薬に関する情報に欠落がなく脳卒中の既往のない8万574人を対象とした。1992,96,2000年に5項目から成るMental Health Index(MHI-5)によりうつ症状を評価した。抗うつ薬の常用については96年に,また使用した抗うつ薬の種類については2000年に初めて尋ねた。これまでのうつ病の診断歴については2000年に初めて尋ね,抗うつ薬と診断歴の情報は,その後2年ごとに更新した。
MHI-5では(1)かなり神経質であった(2)どうにもならないくらい気分が落ち込んでいた(3)落ち着いて穏やかな気分であった(4)落ち込んで憂うつな気分であった(5)楽しい気分であった—のそれぞれの状態について過去1カ月間に感じた頻度を5段階の尺度で回答した。合計スコアは0〜100点の範囲とした。うつ症状があると,スコアは52点以下となる。
6年間の追跡期間中に,脳卒中発症は1,033件(虚血性脳卒中538件,出血性脳卒中124件,種別不明371件)であった。主要合併症などの共変数調整後,うつ病既往と全体の脳卒中リスクとの間に相関が認められた〔ハザード比(HR)1.29〕。
抗うつ薬使用群では,「MHI-5スコアが52点以下またはうつ病診断歴がある」に該当していなくても,うつ病でない対照群と比べ脳卒中リスクが上昇した(HR:該当1.39対非該当1.31)。さらに,2年ごとの調査で,現在臨床的うつ症状(うつ病の既往あるいは抗うつ薬の常用)があると回答した者では,脳卒中リスクが高かった(HR 1.41)。一方,うつ病既往のみがある者では,臨床的なうつ症状がない者と比べて脳卒中リスクは上昇したが有意ではなかった(同1.23)。
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