現役医師であり統合医療の第一人者である崎谷医師が、うつ病の症状・原因・治療に悩む方に対して情報を発信しています。
うつ病の医学ニュース(50)
脳領域間の接続不調がうつ病の症状に関連
うつ病患者では静止期に大部分の脳領域間の接続強度が高くなっていることが論文報告されました(PLoS One(2012; 7: e32508)。うつ病患さんの脳は広範囲にわたって接続過剰になっているとする今回の報告は,不安や注意力,集中力の低下,記憶障害,睡眠障害などうつ病の多様な症状を引き起こす脳機能障害をうまく説明するものかも知れません。
今回の研究では,大うつ病性障害(MDD)と診断された成人121例の脳の機能的接続について検討した。脳の電気信号,すなわち脳波の同期性を測定して,さまざまな脳領域間のネットワークを調査しています。
その結果,うつ病患者さんでは静止期に4種類全ての周波数の電気的活動の同期性が高くなっていることが判明し,多くの脳ネットワークが機能不調になっていることが示されました。異常な接続の強度が最も高かった脳領域は脳の指揮者である前頭前野皮質だったようです。
脳が反応,気分調節,学習,問題解決をするには,各脳領域をまず同期化し,その後に脱同期化できなければなりません。今回、うつ病患者さんの脳では機能的接続を行う能力は保たれていましたが,接続をオフにする能力が失われていることが分かりました。脳が正しく機能するには,その接続のスイッチのオン・オフの調節できなければなりません。この切り替えができなくなっていることがうつ病の多彩な症状につながっていると推測されます。
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