現役医師であり統合医療の第一人者である崎谷医師が、うつ病の症状・原因・治療に悩む方に対して情報を発信しています。
抗うつ剤の医学的根拠は薄弱(2)
関節リウマチ、膠原病などの慢性炎症で使用されるアスピリンや非ステロイド系の鎮痛薬には消化管潰瘍という重篤な副作用が問題となっていました。そこで米国大手製薬会社のメルクは『バイオックス』という消化管潰瘍の副作用がでない薬を発売しましたが、その副作用(心筋梗塞)で死亡した事件が裁判となっていました。昨年、その判決が出て、製薬会社の全面敗訴が決まりました。
この事件をきっかけに米国で医薬品の承認に至る科学的根拠となる臨床実験や論文の問題を詳細に調べて報告されました(JAMA 2008; 299:1800-1812.)。
抗うつ薬ではすでに多くの問題が指摘されていましたが、
その構造を要約すると
1.多くの論文が製薬会社スポンサーまたは第三者の医学出版系のゴーストライターによって書かれており、学識経験者(医師、研究者)の名を使って出されている。
2.医薬品による副作用や死亡率は、論文などに公表されたデータと製薬会社内の本当の実験データとは食い違う(公表されたデータは副作用が少なく報告されている)。
3.医学論文や学会に公表されるデータに関して、都合の悪い副作用のデータは見かけ上、低くなるような統計処理が行われるのが通常である。
論文がきちんと製薬会社との利害関係に言及しているものは半数に満たない。
というものです。
私たち日本の医師は、こういった経緯でねつ造されたデータとも知らずに、製薬会社やその手先である大学教授の勧めに唯唯諾諾として大量の医薬品を使用しているという現状があるのです。近代社会の末路とはこんなものかも知れません。
抗うつ剤の医学的根拠は薄弱(2)