現役医師であり統合医療の第一人者である崎谷医師が、うつ病の症状・原因・治療に悩む方に対して情報を発信しています。
うつの原因P.3
うつ病は脳細胞の機能障害
うつ病の病態を説明するのに「辺縁系前頭モデル」があります。
背外側前頭前皮質などの大脳新皮質、吻側前部帯状皮質などの大脳旧皮質(辺縁系)などおもに他人に共感する能力をつかさどる「共感脳」の血流や代謝が障害されてるという事実から、うつ病は特定の部位の脳障害によって引き起こされると想定されている仮説です。
マクギル大学(カナダ・モントリオール)付属モントリオール神経学研究所のAlain Ptito博士らは,機能的MRI(fMRI)研究から,脳震とう後の抑うつ気分は,うつ病の辺縁系前頭モデルにおける病態生理と一致することを報告しています(Archives of General Psychiatry(2008; 65: 81-89))。
軽度の外傷性脳損傷および脳震とうを経験した者では頭痛,疲労,記憶困難,集中困難、うつ症状を呈することが多いことが知られています。そこで、実際にうつ病でない人がこのような頭部に外傷を負ったのちにうつ症状を来した人の脳の検査をしたものです。その結果は、うつ病特有の「共感脳」(辺縁前頭〜視床下部下垂体系)と同じ部位が障害されていることがわかったのです。
つまり、こういった外傷や生活習慣で脳に機能異常が起こると実際にうつ病を発症するという生物学的な原因が存在するということです。うつ病は、ストレスや人間関係の問題のような精神的影響だけで片付けられるものではありません。ですから、うつ病の治療においては、脳の機能を回復させる生活習慣改善が大切となってくるのです。
うつ病の原因P.3