現役医師であり統合医療の第一人者である崎谷医師が、うつ病の症状・原因・治療に悩む方に対して情報を発信しています。
うつ病の治療P.8
うつ病の分類と症状
うつ病は、以前はその原因によって「内因性」「反応性」「神経症性」に分類されていました。しかし、原因によってうつ病の重症度や経過などと関係がないことや分子生物学や画像診断の進歩によって新しい知見が更新されていることから、現在では原因ではなく、症状で分類されています。
「抑うつ症状」が見られたときに、最初に考えなければならないことは、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、ビタミンB12欠乏症などの代謝疾患、脳血管疾患、エイズ脳症などの感染症、インターフェロン(肝炎の治療薬)治療、ある種の降圧剤(レセルピン)やアルコールなどの常用などがないかということです。このような原因が除外された後、米国精神医学会(APA)が作成した診断基準であるDSM-IV-TR(精神疾患の診断・統計マニュアル)に従って診断されます。この診断は単なる症状での分類とお考えください。うつ病はこのマニュアルの中では「気分障害」の一疾患として扱われています。
一般的なうつ病の症状としては以下のように3つの特徴に分けると理解しやすいと思います。
- 感情の変化
- ネガティブな感情の増加:罪悪感、悲哀感、不安、孤独感、イライラ、自殺念慮など
- ポジィテイブな感情の低下:意欲低下、自信低下、興味減退、幸福感の欠如など
- 行動機能異常
- 行動の緩慢、記憶力・判断力の低下
- 身体症状
- 睡眠障害、摂食障害(食欲の異常)、全身倦怠感、全身の痛み
なぜこの3つに分けるのが良いかというと、うつ病で起きている脳─身体の変化に対応しているからです。まず機能的脳MRI検査での変化を見ると、うつ病の脳の変化では、
- 記憶の中枢である海馬
- 思考・判断・実行機能の中枢である前頭前野(背外側)
- 情動と理性の中継領域で痛み、共感、感情・ストレスのコントロールをつかさどる前部帯状回
の委縮が認められています。
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